NEW New Artists / NEW Backbone Artists 2025 選考結果&審査員コメント発表!

2025.08.09

2025年6月15日(日)〜7月15日(火)まで募集を行っていた展示プラン公募企画「NEW New Artists / NEW Backbone Artists 2025」に、たくさんのご応募をいただき、本当にありがとうございました。応募総数は、NEW New Artists 86件、NEW Backbone Artists 66件となりました。
このたび、審査員による選考結果がまとまりましたので、以下の通りお知らせいたします。
あわせて、各審査員からの講評コメントも掲載しておりますので、ぜひご覧ください。
なお、グランプリおよび審査員特別賞の受賞者による展覧会は【2025年9月26日(金)〜10月19日(日)】に開催予定です。ぜひご来場ください!

選考結果

NEW New Artists

グランプリ:
佐藤清、白川真吏、白間アミーナ、西村梨緒葉、森下綾香(代表)、渡邉元貴

審査員特別賞:
向井ひかり(片山真妃)
浦丸真太郎(高田冬彦)

NEW Backbone Artists

グランプリ:
orm

審査員特別賞:
臼井仁美(スクリプカリウ落合安奈)
木谷安憲(倉知朋之介)

審査員コメント

NEW New Artists 審査員

片山真妃
選ぶのが本当に難しい審査でした。企画内容が明確にイメージできる提案書の完成度の高さに驚きました。各自が扱うテーマも個人や家族についてプライベートなことから社会との関わり、ジェンダーなど多様で刺激的な内容でした。また、ポートフォリオに掲載されている作品が魅力的で可能性を感じるものばかりでした。
今回は極めて個人的な尺度で一案を推しました。根拠のない自信と実験精神が入り混じり、不確実さがむしろ魅力的で、Art Center NEWのこれからを感じたからです。
選ばれなかった方の中にも、強く惹かれる企画がいくつもありました。悔しさはあると思います。どの企画書からも相当の熱量を感じましたから…。選ばれた企画より何かが劣っているとかではありません。この挑戦が次の糧になりますように。応援しています!

高田冬彦
今回審査する上でまず重視したのは、展示の実現可能性です。会場がかなり広く、準備期間も余裕があるとはいえないので、プランの段階である程度具体的に展示の様子を想像できるものに絞りました。
その上で、グランプリを受賞された「佐藤清、白川真吏、白間アミーナ、西村梨緒葉、森下綾香、渡邉元貴」のチームのプランは、「カラオケ」という主題のもつ賑やかな雰囲気で会場をまとめつつも、個々の作家の鋭さを存分に見せてくれるものになるだろうと期待させるものでした。過去作のポートフォリオも充実していて、例えば、「記憶」について考察させる体験型の装置を制作する西村さんや、男性身体と軍隊についてのパフォーマンスを行う渡邉さんの活動など、それぞれの作家がすでにオリジナルな切り口を持っていることが伝わりました。こうした点が、票を入れる決め手となりました。
審査員賞は、浦丸真太郎さんに贈らせていただきます。自身が受けた性虐待の経験や、身体障害のある方への射精介助の実践を元に、他者との関わり方を問う浦丸さんは、彼の他にはできない切実な活動を続けていると感じ、そこを評価しました。
もちろん、他にも優れたプランがあり、本当に最後の最後まで迷いました。特に、美醜やジェンダーのステレオタイプについての作品を作りつつ、ドラァグ・パフォーマーとして領域横断的な活動をするMoche Le Cendrillonさんや、日常的な素材を変形させて奇妙なオブジェを作り、空間に配置する向井ひかりさんの個展プランに、個人的には惹かれました。上記以外にも個別的に気になった作家や作品はたくさんあるのですが、一つずつ挙げていくとキリがないのでやめておきます。
ところで僕は、アートの世界は、多様にいろいろな方向性の表現があることが重要であって、「誰が1番か」を決めることにあまり意味はないと考えています。今回のコンペでも本当は、10人(組)くらいに賞をあげられたら良いのにな、と思います。
今回は選外だった方も、気にせずご自身の活動を続けてください。

秋葉大介
これから世界にでていくだろう若いアーティストの方々の、世に出る前の熱のこもった作品プランを拝見する貴重な機会をいただけて、私自身もとても刺激を受けました。ありがとうございました。
Art Center NEWの会場から発想したもの、これまでの作品を発展させたもの、グループを組んで新たなテーマに取り組んだものなど、それぞれ異なる個性や手法をもつ作品に順位付けをしなければならないことにとても悩みました。私の審査においては、事前に審査基準を設けていたわけではないのですが、プレゼンテーションが上手いものや、写真から予想される作品の完成度の高いものなどより、アウトプットが想像しにくいものや一見実装が難しいように思われるものに惹かれたように思います。そういったものの中に新しい作品の可能性が潜在しているのではと期待していたのかもしれません。
そして、今回初めて公募展の審査をさせていただいて思ったのは、作品の審査においては定量的に判断することは難しいので、どんなにフラットに見ようとしても審査員個人の趣向を完全に排することは困難なのだということでした(だから、複数人で審査を行うのだと思いますが)。裏を返すと落選した方々は、今回たまたまフィットしなかっただけで、別の方々が審査をすれば受賞していた可能性は十分に考えられます。なので今回の結果を気にしすぎることなく、それぞれの信じる制作をこれからも続けていただきたいと思います。

NEW Backbone Artists 審査員

倉知朋之介
今回、若手とされる立場の僕が、「35歳以上」の企画を審査するという、ちょっと攻めた企画に呼んでいただき、とても嬉しく思っています。
審査される側からすれば「なんでお前が?」と思われても仕方ないかもしれませんが、せっかくの機会なので、自分の視点全開で企画書とポートフォリオに向き合いました。
全体を通して強く感じたのは、「同じことを続けていること」自体が放つ、ある種の重さです。
そこには純粋さや執念のようなものも感じつつ、どこか不穏な感触もあって、複雑な気持ちになりました。
何か新しいことをやっているというよりも、積み上げてきたことの中から自然と立ち上がってくる強さや説得力があると思います。
審査をしていて、ふと2年前の大学院生のときに同期から言われた言葉を思い出しました。
当時、修了制作の撮影がやっと終わって、自信満々に素材を同期に見せたとき、「あ、またその十八番(おはこ)のやつっすね」と言われて、編集する気が一気に吹き飛んだ経験があります。
それを今回、まざまざと思い出しました。
あのときの同期がそう言いたくなった気持ちもわかるし、自分自身が作っていた側の気持ちも、今ならよくわかる。
作っている側は更新しているつもりでも、外から見ると「またこれか」と思われる。
そのズレをどう意識していくかはすごく大事で、でも「まだそれをやってるのか」と思わせること自体が、実はすごいことでもある気がします。
粘りや集中力、作り続けること。そういったものが、今回の企画から多く見えてきました。
ただ、その粘りがしんどさや重たさとして滲み出てしまっている企画もあって、見る側としてはちょっと息が詰まるような感覚もありました。
そういった、繰り返しの中でこそ出てくる力強さと、そこにまとわりつくような苦しさを、どう軽やかに乗りこなしているか。
その「軽さ」が空気を変えてくれるかどうかを、ひとつの基準にしながら審査しました。
他人の作品を見ながら、自分自身のことも自然と考えていて、
「あ、自分もまあまあ面白いんじゃない?って思いました。いや、スベってる時のことも忘れずに…」とちょっと我に返る時間でした。
一方で、企画書やポートフォリオの構成にもう少し気を配れていたら、もっと伝わるのにと感じました。
僕自身、大学院時代に何度もわからないと注意を言われてきたので、人ごととは思えなくて、 企画書の文章を書くスペースがギチギチで読みづらい、レイアウトで読む気が削がれる……それだけでも、もったいないです。
今回の審査を通して感じたのは、派手さや巧さよりも、「なぜこれをやり続けているのか?」という問いにどう向き合っているか。
その姿勢そのものが、作品や企画書ににじみ出てくるということでした。
そしてそれは、僕自身にもそのまま跳ね返ってくるような、そんな濃い時間でもありました。
選ぶ/選ばれるという関係を超えて、たくさんの企画に刺激をもらいました。

スクリプカリウ落合安奈
今回、初めて現代美術のコンペティションの審査員を務めさせていただきました。
Art Center NEWが主催する初のコンペティション形式の展覧会、そして中堅世代のプランを若い世代が審査するという新しい試み。
いくつもの「New」が重なり合う中で、まさに新しい何かが生まれる場に立ち会えたことを、とても嬉しく感じております。これまでのキャリアでは、ずっと審査をされる側でした。今回、展示や人生の経験を積んでいる中堅世代のアーティストの方々のプランを真剣に拝見する過程で、私自身も多くの刺激と学びを得る機会となりました。
多様な職業やバックグラウンドをもつ方々からの応募があり、それぞれの視点の豊かさが非常に印象的でした。また、作品に込められたテーマも、私の世代ではあまり見かけないようなライフステージに根ざしたものが多く、個々の人生経験が表現に深みを与えていたように感じます。既存の「アート言語」に則った企画書は理解しやすく、視覚的にも洗練されていましたが、今回は様々な背景をもつ応募者がいらっしゃったので、そのようなフィルターをできるだけ外し、フラットな視点で審査することを心がけました。
たくさんの応募書類をじっくりと拝見する中で、限られた情報からいかに審査員の心を動かし、「このプランを、実際にNEWの会場で見たい」とワクワクさせられるかどうかが、大きな決め手になりました。書類上で語れることには限界がある——それは、フィールドワークやミクストメディア・インスタレーションをベースに制作してきた私自身、これまでの経験の中で強く感じてきたことです。
それでも、空間と作品との対話から立ち上がる「この会場で展示したい」という熱意、複雑な背景やリサーチが丁寧に言語化され、誰が読んでも明快に伝わってくること、そして作家として新たな挑戦に取り組んでいる姿勢は、書面からでも確かに伝わってくるのだという実感を持ちました。
最終的には、戦争や暴力、災害のニュースが絶え間なく溢れる今、展示を通じて新しい希望の視点を与えるようなプランに票を入れさせていただきました。しっかりと練られたプランであっても、応募規定に沿っていなかったために審査対象とならなかったものがいくつかあり、とても惜しく感じました。今回応募いただいた皆様の作品を、今後も様々な場所で拝見できることを楽しみにしております。

平野 遥(Art Center NEW)
Art Center NEWでの初めての公募企画にご応募いただいた皆さん、本当にありがとうございました。企画の原案は代表の小川希によるものですが、私が全体の進行を担当させてもらっています。審査員というのは偉い人がやるものだと思っていたのでとても緊張しましたが、現場に限りなく近い一個人として、応募資料と向き合わせていただきました。
最近は同世代や少し下の世代のアーティストの方々との関わりが多かったので、上の世代の方々のプランは、新鮮なものに感じました。個性的で魅力的なプランのひとつひとつに感激しながら、限られた情報の中で自分が安易に理解できるものを消極的に選んでしまっていないか?と何度も自問自答しながら、資料に目を通していきました。
審査では、作品自体の面白さだけでなく、Art Center NEWという会場に実際に作品が置かれることまで見据えて思考やアイデアが展開されていると感じられたプランに票を入れるようにしました。現実の場に置かれた状態を生き生きと想像でき、かつ、それでも想像できない未知の可能性を感じさせるもの。加えて、その人がその表現をする理由や動機が資料から伝わりながらも、自分が到底理解できない部分を含み、しかし、その人の中では確かに結びついている何かを感じるものに惹かれました。
審査を通して、何かの基準を持ってひとつのプランを選ぶことの難しさ、公募という仕組みのあり方について、多くのことを考えさせられました。今回の貴重な経験を、今後のArt Center NEWでの企画に活かしていけたらと思っています。
遠方にお住まいの方もいるかと思いますが、よければグランプリ受賞者の展示をぜひ見に来てください。私も会場にいることが多いので、今回の公募についての感想やご意見も、ぜひ聞かせていただけたら嬉しいです。資料を通して一方的に作品を見させていただいたので、いつか顔を合わせてお話ができたらいいな、と思っています。
これからも皆さんの活動を心から応援しています。
あらためて、このたびはご応募いただき、本当にありがとうございました。